私が一番近かったのに…
この日を境に、私は変わった。怖くて怯えていた自分が嘘みたいに、強くなった。
恋をして、変わったのかもしれない。そして、身近に最強のライバルがいたからかもしれない。
私にとって、彼女はライバルだ。ずっと目障りで仕方がなかった。消えて欲しいと思うくらいに、憎んでいた。

彼の気持ちが少しでもこちらに向けば、私のこの醜い感情は消えるかもしれない。
こんな自分が惨めで、ずっと嫌いだった。
そんな自分を打ち消すかのように、私は彼女に勝つことだけを目標にしていた。
だから、私は最後まで彼女に勝てなかったのかもしれない。
この時の私は完全に目的を見失ってしまっていた。
そんなことに気づくのは、まだあともう少し先のお話である。

今はまだ彼に話しかけることだけで精一杯で、彼女のことがちょっぴり嫌いだった。
でも、そんな私が大きな一歩を踏み出したのであった。

「すみません。ちょっといいですか?」

困ったふりはもう止めて、彼と普通に話してみたいと思った。
彼のことをもっと知りたいと思ったからである。

「いいですよ。何か困り事ですか?って、もしかして、この間の…」

「はい。この間の者です。
でも、今回はあなたに用があってきました」

今はこれだけでいい。いつか彼に想いを告げられるようになるまで、仲良くなるための、地道な一歩を踏み出したのであった。


          一END一
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