私が一番近かったのに…
「この度はご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございませんでした…」

私は今、ファミレスに中山くんと二人でいる。それは何故かというと、彼に謝りたかったからである。
愁とのことで、たくさん彼には迷惑をかけてしまった。
せっかく、私の為を思って連絡してくれたというのに、それを無視し、挙句の果てに気を使わせてしまった…。
どうしても、彼に謝りたかった。今までたくさん迷惑をかけた分、彼には感謝の気持ちを伝えたかった。

「いいよ。そんな大袈裟に謝られても困るし。
俺は気にしてないから大丈夫だよ。大平さんが元気そうでよかった…」

今日、こうして二人で会うことになったのも、愁が中山くんを説得してくれたお陰である。
中山くんは気を使う人なので、私に会うのを断る可能性も考えた上で、愁が間を取り持ってくれた。
きっと愁がいなかったら、こうして二人で会うこともできなかったかもしれない。
私は中山くんがずっと苦手で避けていた。勘が鋭い上に、何を考えているのかよく分からないため、掴みどころがなく、どう接したらいいのか戸惑っていた。

でも、そんな中山くんがいつも私の背中を押してくれた。
それはきっと私達の気持ちを、誰よりも一番理解してくれていたからだと思う。
そんな中山くんの優しさに、今更になって気づくなんて、私は薄情者かもしれない。

「中山くんとずっと話してみたいって思ってたの。
バイトしてた頃は、ずっと心に余裕がなくて。愁のことで頭がいっぱいだったから。
でも、今はこうして気持ちに余裕ができ始めて、私はたくさんの人に支えられてたんだなってことに気づいて。
それで、改めてこうして中山くんと話す機会が欲しくて、今日は来てもらいました」
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