私が一番近かったのに…
教えてくれなければよかったと、そう思ったりしたこともあった。
でも、中山くんは何も悪くはない。親切心で教えてくれたのだから。
今ではとても感謝している。中山くんがいなかったら、愁と恋人になれていなかったと思う。
それに、アルバイトももっと早くに辞めていた可能性だってある。
だからこそ、あの時教えてくれたことに意味はあったと、そう思えるようになった。

「私はあの時、教えてもらってよかったと、心の底からそう思ってるよ。
中山くんがいたから、私は愁と恋人になれたんだと思う。ありがとう。いつも私に教えてくれて」

「そう言ってもらえて、心が少し救われたよ。
でも、よかった。俺のお陰ではないと思うけども、二人が無事に付き合えることになって」

誰よりも一番嬉しそうな顔をしていた。中山くんは、やっと安心することができたのかもしれない。

「中山くんが私に教えてくれなかったら、きっと私はもうとっくに諦めていたと思う。
だから、中山くんのお陰だよ。本当にありがとう」

「確かに俺は、大平さんに愁の本当の気持ちを伝えたよ。
でも、きっと俺が愁の本当の気持ちを伝えていなかったとしても、大平さんが愁を想う気持ちは本物だから、諦めずに愁のことを想い続けていたと思うよ」

確かに中山くんの言う通りかもしれない。
私が愁を想う気持ちは、そんな簡単に諦められるものではなかった。
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