私が一番近かったのに…
「そうかもしれない。でも、ありがとう。いつも私のことを陰で支えてくれて」

諦めずに済んだのも、中山くんの支えがあったから。
それに私と愁が素直になれたのも、私達の気持ちを知っていた中山くんが、背中を押してくれたお陰である。

「あのさ、大平さん。褒めてくれるのは嬉しいんだけども、あまり他の男のことを褒めない方がいいと思うよ」

後ろを指さされ、振り向くとそこには愁が立っていた。

「愁、来てたんだ」

「あぁ。今さっきな」

分かりやすいくらいに不機嫌な態度だ。
中山くんが愁の機嫌を察して知らせてくれなかったら、もっと愁の機嫌が悪くなっていたかもしれない。

「あまりにも遅いから、もう迎えに来た。
そろそろいいよな?俺の女だから」

中山くん相手にムキになる必要なんてないのに。
中山くんは私のことを恋愛対象として見ていないと思う。人としては好かれていると思うが。

「俺に敵意を向けないでよ。大平さんに呼ばれて、ここに来たんだから」

確かにそうだ。どうせ怒りを向けるのであれば、私のことを叱ってほしい。

「うるせー。目の前で彼女が他の男のことを褒めてたら、嫌なもんなんだよ」

つまり、愁はどうやら中山くんに嫉妬しているみたいだ。

「はいはい。分かりましたよ。俺はもうそろそろ帰るよ。大平さんと話したかったことも話せたし。これからは、俺のことを避けたりしないでね」
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