私が一番近かったのに…
「そんなこと言われちゃったら、彼氏がほしくても作れないよ」

冗談交じりに、笑いながらそう言った。上手く笑えているか不安だ。
きっとぎこちない笑い方をしているであろう。今は愁にさえバレなければ、それでよかった。

「なんだよそれ。俺のせいかよ」

愁のせいじゃない。いつまでもウジウジしたまま、ずっと気持ちを伝えられない自分のせいだ。

「幸奈…」

甘い声で私の名前を呼ぶ。愛おしそうに呼ぶくせに、そこには愛なんて存在しない。

「何?もうすぐ着くよ」

わざと可愛気のない返事をした。少し意地を張ってしまった。素直に可愛く振る舞えばいいだけなのに…。

「なんでもない。また明日な」

いつもの強引でマイペースな愁とは違う。どこか迷っているように感じた。
違和感に気づきつつも、そのことについて触れられないまま、月日だけが流れていった…。
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