私が一番近かったのに…
そんな二人だからこそ、俺の今の気持ちを相談できたんだと思う。

「私、たくさん中山くんに迷惑かけてきたから、今度は中山くんの力になりたい。
中山くんが幸せになるためなら、何だってしてあげたいって思ってるよ」

今まで俺がしてきたことは、どうやらお節介ではなかったみたいだ。
こうして、いつか自分に恩返しされる日が訪れるなんて、思いもしなかった。

「ありがとう、愁。それに大平さんも。二人に相談してよかった。気持ちが少し軽くなったよ」

今までこんなに悩んだことはなかった。
この胸が苦しくなる感覚は一体、何なのだろうか…。

「それで、中山は幸保とどうなりたいんだ?幸保の彼氏になりたいのか?」

愁に問いかけられるまで、俺は気づかなかった。本当の自分の気持ちに…。

「今は彼女を支えてあげたい。彼女のことが好きだから」

本当は少し前から自分の気持ちに、気づいていたのかもしれない。
認めたくなかったんだ。親友の元カノを好きになってしまったことを…。

「意外だな。お前が幸保のことを好きになるなんてな」

愁と付き合っていた頃は、彼女のことなんて眼中になかった。
人の彼女を好きになるなんてこと、俺には絶対に有り得ない。
きっと愁に失恋して悲しんでいる彼女だから、好きになったんだと思う。
俺は世話焼きな性格だと、自分でもそう思っている。
だから、悲しんでいる人や苦しんでいる人の傍で何かしてあげたくなってしまう。
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