私が一番近かったのに…
「へぇー。そうだったんだ。楽しかった?」

愁の名前を出して、もし不機嫌になったら…と心配していたが、どうやら大丈夫そうだ。
これなら、二人に紹介するという話も大丈夫かもしれない。

「楽しかったよ。二人にやっと俺達が付き合い始めた報告ができて」

見る見るうちに、幸保の顔が真っ赤になっていった。
その様を見ているのがとても面白くて、同時に可愛くもあった。

「え?報告してきたの?!それで、どうだった?」

「二人共、ちゃんと祝福してくれたよ。自分のことのように喜んでくれた」

やっぱり、幸保はまだ心の中のどこかで、愁のことが気になっているのだろうか。
だとしたら、紹介するのは止めるべきかもしれないと、醜い嫉妬をしてしまった。

「…よかった。祝福してもらえて。あのね、私、ずっと不安だったの。きっと愁くんの彼女さんに、良い印象を持たれていないんじゃないかって思ってたの。
あと、愁くんも私と和樹が付き合うってなると、嫌悪感を抱くかなと思ってたから。祝福してもらえて嬉しい」

どうやら、俺の不安は必要なかったみたいだ。
まさか、幸保が俺のことをそんなに考えてくれていたなんて、思いもしなかった。

「幸保、大好きだ!」

街中だということを忘れて、嬉しさのあまり抱きついてしまった。

「もう...。和樹ったら。仕方ないな」

笑って許してくれる彼女の優しいところが、俺は好きなのだと、改めて実感させられた。

「あのさ、幸保さえ良ければ、二人に幸保のことを紹介したいと思ってるんだけど、いいかな?」

「もちろん。紹介してほしい」

「ならよかった。二人にも伝えておくね」

案外、二人に紹介する日はそう遠くないかもしれない。
早く二人に紹介したくて堪らなかった。この人が俺の彼女です…と。


          -END-
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