私が一番近かったのに…
「幸奈、お風呂上がったよ」

お風呂上がりの愁は、いつも上裸である。
そんな愁の上裸姿を見て、いつも思っていることなのだが、一体いつ肉体を鍛え上げているのだろうか。
運動をしている様子は見られないし、筋トレをしているところを見たことがない。
悔しい…。私もちょっぴり筋肉がほしいものだ。

「羨ましい……」

間近で愁の裸体を観察しながら、触って確かめてみる。
私にもある程度の筋肉がほしい。気になる部位を引き締めたい。

「幸奈さん、あの…、俺の裸に何か?」

「つかぬ事をお聞きしますが、愁さんはいつ鍛えておられるのですか?こんな簡単に筋肉はつきませんよね?」

まさか秘密の特訓があるのかな?
誰でも簡単筋トレ!君も明日から筋肉がつくよ!…とかだったりして。

「一応、筋トレやってるからね。あとプロテインを飲んだりもしてるよ。もしかして、筋肉に興味があるの?」

首を縦に頷く。どうやったらスマートになれるのか、日々考えている。
痩せたい。醜い今の姿をあなたに見せたくない。どうせなら、綺麗になった姿をあなたに見せたい。

「幸奈は今のままでも充分綺麗だよ。程良い肉付きだから、足も腕も綺麗だし、お腹だって出ていない。これ以上痩せたら、俺は心配だな」

抱きしめられた。優しく包み込むように…。

「寧ろ幸奈にはもっと太ってほしい。こんなに軽くて痩せてると、いつか倒れるんじゃないかって、俺、いつも心配なんだ。
なのに、これ以上痩せたいなんて、俺の気苦労も絶えないよ。お願いだから、痩せようなんてもう考えないで…」
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