私が一番近かったのに…
愁は時々、過保護すぎるところがある。
でも、今だけはその過保護なところが落ち着く。
好きな人に言われる一言って、ここまで破壊力があるなんて知らなかった。
よし。私は決めた。

「分かった。もう痩せたいなんて言わないよ。
だから今度、簡単な筋トレを教えてほしいな。せめて、筋力は欲しいの。体力もつけたいし」

両手を前で合わせて、愁にお願いする。痩せる痩せないはこの際、どうだっていい。
愁がどんな筋トレをしているのか、近くで見てみたい。
彼氏の筋トレしている姿を見て、きっと更に惚れ直すことに違いない。

「そんなふうに可愛くお願いされたら、こっちも断れないよ。仕方ない。今度、一緒に筋トレしてみよっか。
でも、絶対にムキムキにはさせたくないから、プロテインだけは飲ませないからね」

私をなんだと思っているのだろうか…。
さすがに私もそこまでは考えていなかった。

「愁、大丈夫だから。私はある程度の筋肉が欲しいだけであって、ムキムキになろうとか考えたりしていないからね」

「当たり前だ!もし考えていたら、俺は意地でも止める!ムキムキなんてダメだ。幸奈は今のままで充分だ!」

大平 幸奈、彼氏の溺愛っぷりに若干、引いています…。
愛情とは時に重いもの。私は彼がこの先、どうなってしまうのか、先行きが不安だ。
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