私が一番近かったのに…
「だって、恥ずかしかったんだもん。愁の身体に見蕩れてるなんて言うの…」

私は筋トレすらまともにできない。
それに比べて愁は、ちゃんとトレーニングをして、筋肉を付けているのがずっと羨ましかった。
気がついたら、いつも目で追っていた。愁の身体を…。
付き合う前に、既に私達は身体の関係を持っていた。
当時はそのことでたくさん悩んだりもしていたが、あの頃からたくさん愁の身体に見慣れているとはいえ、好きな人の裸はいつになっても見慣れないものである。
愁も私と同じ気持ちかな?私の身体に見飽きていないといいなと思う。

「そんなに俺の裸を、幸奈に見られていたのかと思うと、恥ずかしいな…」

見られていたことが恥ずかしくなったのか、急に手で前を隠し始めた。
照れている愁は可愛いと思うが、隠し方はカッコ悪かった。

「隠し方が女か。まぁ、照れてる姿は可愛いと思いますけど?」

「おい、バカにしてないか?一応、俺も羞恥心はあるんだぞ」

さすがに愁も羞恥心があることは知っている。寧ろ羞恥心がない方が問題である。
そんなことよりも、隠し方があまりにも情けないので、もう見ていられない。見ているこちらの方が恥ずかしくなってきた。

「はいはい。いいから、風邪を引く前に服を着なさい」

「お前、今、適当に流しただろう?
そうだな。風邪を引いたら、幸奈に迷惑かけちまうから、そろそろ着替えてくるわ」

一旦、リビングから去り、数分後に着替え終わった愁が、リビングに再び戻ってきた。
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