私が一番近かったのに…
◇
「幸奈、今日はどうしても送ることができない」
バイトの休憩中、愁から突然告げられた。ついにこの日がきてしまったみたいだ。これでようやく諦めがつくかもしれない。
「うん、分かった。私は大丈夫だから、気にしないで」
涙を堪えるのに必死だった。笑顔で耐えるしかなかった。
「悪いな。彼女と一緒に帰る約束しててさ。
…親に内緒で、泊まりなんだ。俺ん家で」
もう二人の仲は、そこまで進んでいるみたいだ。
一夜を共に過ごすなんて、絶対にやることをやるに決まってる。
そんな二人の姿を想像するだけで、胸が破裂しそうになった。
そんな想いを隠すために、「いいなー…楽しんできてね」なんて、曖昧な返事をしてしまった。
「あぁ、悪いな。代わりに違う奴に頼んでおいたから」
代わりなんていらない。彼女と一夜を明かすくらいなら、私と一緒に居てよ…。
メラメラと沸き上がる嫉妬。日に日に熱く燃え上がっていき、抑えることなんてできなかった。
「ありがとう。わざわざ私のために…」
「当然だろ。大切な友達だからな」
友達…。本人からそう告げられてしまうと、もう諦める以外、方法はなかった。引導を渡されたも同然だ。
「そうだね。ありがとう。夜道は暗いし危ないから、誰かが傍に居てくれると助かる」
女の子扱いしてくれるけど、あなたの目には映らない。それは私にとって、とても残酷なことだった。
心が痛い。今すぐにでも、涙が零れ落ちそうになった。
「安心しろ。次はちゃんと俺が送るから」
頭をポンポンと撫でられた。これは愁の癖だ。触れられた部分が熱を帯び始める。
どうしよう。諦めなきゃいけないのに、益々好きになってしまうだけだった…。