私が一番近かったのに…
「中山くんは愁のことで、何か知ってることがあるの?」

「それは大平さん次第かな。とりあえず送るよ。一緒に帰ろっか」


夜道を一緒に歩き出した…。いつも隣に居るはずの人ではない人と共に…。


           ◇


「大平さんはさ、愁のこと…好きなの?」

いきなり唐突な質問をされた。これはきっと、中山くんの話したい話に直結しているのであろう。
でも、私の気持ちを中山くんに教えることはできない。
だって、愁には今、彼女がいるから。誰かにこの気持ちを知られるわけにはいかなかった。

「どうしたの急に?私は愁のこと、友達として好きだよ」

嘘をついてしまった。嘘なんてつきたくなかったのに…。
しかし、本音を言うわけにはいかない。本当は誰よりも好きだと伝えてしまいたいけど。

「それじゃ、この話をしても問題ないか。本当は愁に止められてたんだけど、大平さんが愁のことを好きなら…って思ったんだ。
まぁ、気持ちがないなら、黙って聞かなかったことにしておいてくれる?」

この展開は…まさか。想像していた嫌な予感が的中してしまった。
愁は中山くんにどんな話をしていたの?私に言えないことって一体、どんな話なの?
知りたいのに、知るのが怖い。この先を聞きたいようで、聞きたくなかった。

「愁は大平さんのことが、好きだったんだよ」

私のことを……好きだった………?
それじゃどうして、私ではなく、あの子を選んだの?
そういえば、あの時聞かれた一言を思い出した。
< 37 / 346 >

この作品をシェア

pagetop