私が一番近かったのに…
「あんまり無理すんなよ。幸奈は何でも一人で抱え込む癖があるから、何かあったら俺に頼れよ」

こんなふうに優しくされてしまうと、余計に苦しくなってしまう。愁のことを嫌いになれたら楽なのに…。

「大丈夫。無理はしてないから。
でももし、何かあったら愁を頼るよ。その時はよろしくね」

「あぁ、勿論だ。俺が幸奈の一番の親友だからな」

親友になったつもりなどないが、どうやら愁の中で私は親友みたいだ。

「そうだね。私達は親友だね」

愁に話を合わせるだけでも辛かった。
どうして私がこんな目にあわなきゃいけないの?と嘆きたい気持ちで胸がいっぱいだ。

「幸奈、もう一つお願いしてもいいのか?」

「今度はどんなお願い?私にできる範囲内のお願いなの?」

「それは幸奈次第なんだが、よかったら今夜、幸奈ん家でその…してもいいか?」

最近、愁の言葉の意味がすぐ理解できるようになった。
これはつまり、セックスがしたいという意味だ。

「別にいいよ。もしかして愁、溜まってるの?」

「すげー溜まってる。最近、彼女としてないんだ」

それなら、彼女がわざわざ家まで来てるのだから、彼女とすればいいのに…。
そっか。今は彼女に疑われてるから、このタイミングでセックスしてしまうと、身体目当てだと思われるから、それは避けたいのか。
それで彼女とは、なかなかセックスができず、溜まってるから、彼女より私を優先したというわけか。
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