私が一番近かったのに…
「彼女としてる時は、そこまで盛り上がらないの?」

「盛り上がらないかな。幸奈としている時の方が興奮する」

どうしてそこまで、はっきりと断言することができるのだろうか。
好きでもない人とするなんて、私には想像すらできない。
もしかしたら、男性の方が好きでもない女性とやれちゃうのかもしれない。私の感覚からすれば、到底無理な話だが…。

「そうなの?そこまで言われると、やるしかないね」

やらないという選択肢は、セフレの間には存在しない。
それに私の身体は、愁に触れられてしまえば、反応してしまう。
そうなってしまえば、後は結局やるしかないのであった。

「当たり前だ。やる以外、選択肢はないだろう。
もし、やらなかった場合は、幸奈のことを一生呪うからな」

本当に呪われそうで怖いので、ここは大人しく愁の言うことを聞くことにした。
愁が私を選んだ…。その時点で何となく察していた。これはきっと彼女と何かあったに違いないと…。
でもまさか、彼女に疑われていたなんて、思いもしなかったが。
いつか絶対、こんな日がくる予感はしていた。
定期的に愁の様子を伺いに来ている彼女なら、絶対に私の存在を知っているはず。
もしかしたら、一緒に帰っていることも知っているのかもしれない。

全てを知った上で、相手を理解し、丸ごと受け入れることなんてできない。
誰しも好きだからこそ、相手を独占したいという気持ちが生まれる。
彼女は愁を独占して、他の女性を見てほしくな
いだけだ。
愁は彼女の独占欲を嬉しくは思わないのかな?
彼女の気持ちを無視してまで、私と一緒に居たいの?愁にとって、本当に大切なものって何?
ダメだ。考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。
これは愁の問題だ。私が出る幕ではない。知らなくてもいいこともある。今は知る必要がないと判断した。

「一生ってずっと一緒に居るつもりなの?」

「当たり前だろ。俺達、友達なんだから」

私は友達のまま、ずっと一緒には居られないけど。
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