私が一番近かったのに…
「そこで提案なんだけど、岩城くん、大平さん一人で帰らせるのは危ないし、それにお家がご近所さんみたいだから、一緒に帰ってあげて」

店長…ナイス提案。でも、少し申し訳ない気持ちもあった。
只でさえ労働して疲れているというのに、近所だからという理由だけで、一緒に帰らなくてはならない。
彼が嫌でないことを願うのみ…。そんな私の心配を消し去るかのように、彼は嫌な顔もせずに、

「分かりました。ちゃんと送りますね」

…と、すんなり返事をしていた。
本当にいいの?ましてやただの同僚だよ?彼女ならまだしも、只のアルバイト仲間を送るなんて…。
頭の中で色々と考えているが、結局のところ、岩城くんが私と一緒に帰ることを嫌がらないでくれたことが、素直に心から嬉しかった。

「それじゃ、大平さん、一緒に帰ろうっか」

本当に一緒に帰るんだ…。嬉しかった。彼の方から私に声をかけてくれたことが…。
私はそんな彼の後ろを付いていくだけで、精一杯だった。

「お先に失礼します。お疲れ様でした…」

一応、店長に一言声をかけてから帰る。その時、店長の顔が笑顔だった。
どうして笑顔なんだろう?…と、ふと疑問に思ったが、同僚同士が仲良くしている姿を見て、店長としては、嬉しいことなのかな?と思った。
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