私が一番近かったのに…
こうなってしまった愁を、誰も止めることはできない。
それに、愁はなかなか終わらせてくれない。私のことなんてお構いなしに、こちらの体力が先に尽きても行為を続ける。
そして、目を覚ますと大体、朝になっていることが多い。
間違いなく愁は絶倫だ。これだけははっきりと断言することができる。

しかし、私は今のペースのままやり続けることに、少し不安を感じていた。
このままのペースを維持し続けたら、いつか愁に飽きられてしまう日が、すぐ訪れてしまうのではないかと。
それでも今のところは、飽きられている様子はないので、まだ私を求めてもらえていることに、安心している自分もいる。

「任せて。責任はきっちり取りますので」

「なら覚悟しておけよ?今夜は寝かせねーからな」

大丈夫。まだ私には価値がある。不安になる必要なんてない。今日みたいな特別なことは、もう二度と起こらないかもしれないけど。
それでも、まだこの先もやっていける。身体目当てでも構わないと決めたから。
何度も自分にそう言い聞かせては、心を落ち着かせてきた。
すると自然に心が軽くなり、いつもの私に戻れる。
まずは今、目の前のことだけに集中する。愁と一緒に過ごすこの時間が大切だから。

「寝かせてくれない方がいい」

「幸奈ってすげー女だよな。俺の彼女なんてここまでさせてくれねーよ。
途中で、力尽きるから嫌だ!って拒否されるんだよ。俺はまだなのに…ね。
幸奈だけだ。最後まで俺に付き合ってくれるのは」

どうやら、彼女に私との関係を疑われていることだけが、原因じゃないみたいだ。
彼女を選ばなかった原因が分かり、腑に落ちた。
そういえば、前にも彼女との不満を暴露していたことがあった。
顔の筋肉が緩みそうになる。そっか。付け入れる隙がまだあるみたいだ。
ということは、まだ私にもチャンスがある。もしかしたら、彼女に勝てるかもしれない。
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