私が一番近かったのに…
そして、その日は意識を手放すまで、二人でたくさん求め合った。
頭の中が空っぽになるまで繋がっていたかった。心も身体も充分に満たされるまで…。


           ◇


「幸奈、起きろ。朝だぞ」

あれ?どこからか愁の声が聞こえてくるような気が…。
そうだ。昨夜、バイト終わりに愁が家に来たことを思い出した。
記憶が段々と蘇り始める。あぁ、そっか。私、途中で意識を手放しちゃったのか。
昨日はいつもより激しかった。途中からもう、どちらが上で下なのか分からなくなるほど、何度も激しく求め合った。
寝ぼけ眼で辺り一面を見渡せば、脱ぎ散らかした服に、クシャクシャになった布団やシーツを見て、事後の光景を目の当たりし、改めて昨夜のことを思い返すと、再び身体に熱が帯び始めた。

「愁、おはよう……」

目を覚ますと、愁が私を上から覗き込んでいた。そんな愁は既に身支度が整っていた。まるで今からどこかへ出かけていくかのよう。
一方その頃、私はというとまだ裸のままだ。身体が気怠くて、着替えるのも面倒くさい。
幸いにも今日は大学がお休みの日だ。よかった…お休みで。これならバイトまで身体を休められそうだ。

「ごめんな。昨日、無茶させて…」

「ううん。大丈夫。嬉しかったから」

私のバカ。発言を撤回することはもうできないので、後悔しても既に遅かった。

「俺も幸奈とできて嬉しかった」

嬉しさを表現するあまり、愁が私の頭を撫でてくれた。
その手があまりにも優しかったので、とても幸せな気分になれた。
これでいい。セフレでも充分幸せだ。こんなにも優しくしてもらえて、甘い気分を味わえるのだから。
なんて思った次の瞬間だった…。
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