私が一番近かったのに…
愁のことをこんなに好きなのに、好きじゃない未来なんて、まだ想像すらできなかった。
でももし、いつか好きじゃなくなる未来があるとしたら、今すぐにだってそうなりたい気持ちだ。
身体だけじゃなく、心までもが重い。さっきまで晴れていた心模様が、一気に曇り模様になった。
バイトに行くモチベーションも下がってしまった。
それでも、休む選択肢はなかった。もうどうしたらいいのか分からないまま、途方に暮れていた。


           ◇


「いらっしゃいませ…」

結局、真面目にバイトに来てしまった。愁は休みでいなかった。
よかった…。どんな顔をして会えばいいのか分からなかったので、こちらとしては愁がいない方が都合が良かった。

「大平さん、疲れてる?」

代わりに今日は、中山くんが一緒のシフトだった。
私に衝撃的事実を教えてくれた張本人だ。中山くんには申し訳ないが、今の私にとっては、複雑な気持ちだった。
中山くんが教えてくれなければ、今頃私は……。
ダメだ。人のせいにするのは良くない。あれは自分の意思で動いた行動に過ぎない。
遅かれ早かれ、いつか行動に移していたであろう。
本当は自分のせいだってことくらい、分かっていた。
それでも誰かのせいにしていないと、何もかもが崩れてしまいそうで。そんな自分が怖かった。

「え?そう見える?なかなか疲れは隠しきれないものだね」

中山くんは神妙な面持ちをしていた。きっと私に真実を告げたことを後悔しているのだと思う。
後悔するくらいなら、言わないでほしかったけど…。

「俺のせいだよね?俺が余計なことを教えちゃったから…」

「ううん!中山くんのせいじゃないよ。
昨日、夜更かししちゃってね。そのせいだから」

まさか、愁とあんなことをしていたなんて、口が裂けても言えなかった。
< 68 / 346 >

この作品をシェア

pagetop