私が一番近かったのに…
「そっか。それならよかったよ。仕事中にごめんね」

「ううん、大丈夫だよ!私の方こそ疲れた顔してごめんね…」

中山くんは何も悪くないのに、私が彼に謝らせてしまっている。不甲斐ないな…。どうして私は、人に迷惑ばかりかけてしまうのだろうか。
素直に頼ってしまった方がよかったのかな?そしたら中山くんは、私のことを叱ってくれたかな?
何も事情を話せないまま、却って彼を傷つけてしまった。

「そんなことないよ。早く疲れが取れるといいね」

「そう言ってくれてありがとう。今度のオフはゆっくり休むことにするよ」

中山くんはずっと優しかった。そんな時つい、愁と中山くんを比べてしまう。
何故、そこまでして愁のことを好きなのか、自分でもよく分からなかった。
こんな気持ち、全部なくなっちゃえばいいのに…と思った。


            ◇


その日のバイトは散々だった。ミスを連発してしまい、中山くんに迷惑をかけてしまった。その分、たくさんフォローしてもらった。

「中山くん、迷惑かけてごめんね。
あと、フォローしてくれてありがとう」

「それくらい大丈夫だよ。大平さんこそ大丈夫?」

大丈夫…じゃないかもしれない。心はとっくに限界を超えていた。

「明日から暫くバイトはお休みだから、ゆっくり休めるし大丈夫だと思う」

三日間もお休みを頂けた。これで少しの間、愁と顔を合わせないで済む。
これならば大丈夫。きっと元通りに戻れるはずだ。

「休養は大事だから、ゆっくり休んでね」

中山くんはこれ以上、聞いてこなかった。もしかしたら、中山くんは全て分かっていたのかもしれない。
だからこそ、空気が悪くならないように気を使ってくれたのだと思う。

「そうだね。それじゃ、お先に失礼します。お疲れ様でした」

あまり長居はしたくなかった。中山くんとこれ以上、気まずくなりたくなかったから。私は逃げるようにその場を去った。
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