私が一番近かったのに…
こうして改めて知る情報に、私はドキドキしていた。まるで少女漫画の世界みたいだ。
運命とか、そういった類いのものを勝手に信じてしまいそうになった。

「え?そうなの?初耳だよ。そっか。岩城くん、ご近所さんだったんだ…」

こうやって、少しずつ彼との接点が増えていく。そのことがとても嬉しかった。
もっと彼と仲良くなりたい。彼に近づきたい。その気持ちに、歯止めが効かなくなってきているのが、自分でも手に取るように分かった。

「…あのさ、大平さんさえよければなんだけど、これからもバイト終わりに俺が送ってもいいかな?」

まさかの提案だった。こんなミラクルが何度も起きるんて。
もはやこれは夢かもしれない…。なんて思うほど、現実を信じられなかった。

「それじゃ、お願いしようかな。一人だと怖いし」

いつかお互いの家に行き来するようになるほど、仲を深められたらいいな。
そうこうしているうちに、いつの間にか付き合うようになって。半同棲みたいになって…。
…なんていう、まだ見えない先の未来の妄想を繰り広げてしまった。
彼はきっとそこまで考えていないかもしれない。
それでも私は嬉しかった。彼に好意を抱いてもらえているという事実が…。

「よかった。嫌がられたり、ウザがられたらどうしようって緊張してたから。
それじゃ、約束だよ?毎回一緒に帰るっていう約束」

指きりを交わした。これは二人だけしか知らない約束。
この約束は紛れもない彼自身の想いだった。
その想いと優しさに触れて、私はもうこの恋を加速させることしかできなかった。

「うん。約束」
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