私が一番近かったのに…
「確かにそうかもしれないね。男も女も双方が気持ちいいことが前提で、成り立つのかもね」

「まぁ、そういうことだ。つまり、お前が気持ちいいと、俺も気持ちいいってことだ」

こうしてたくさん褒められると、なんだか悪い気はしない。
私も愁と同じ気持ちだ。だってあなたとしてる時が一番幸せだから。

「早く幸奈ん家に着かないかな」

近いようで案外、距離がある。もう待てない。お互いに早くしたくてたまらなかった。

「なぁ、ホテルに行かないか?」

初めて愁からホテルに誘われた。まさか愁の方から誘ってきてくれるとは思ってもみなかった。
前々からホテルに行ってみたいなと思っていた。
でも、私から誘うのはなんだかちょっと気が引けた。お金がかかることだから。
私一人が行きたいと思っていても、愁は行きたいと思っていないかもしれないし。
なんてことを考えていたら、誘えないまま月日だけが経過していた。

「行きたい。でも、いいの?ホテル代、私も半分出そっか?」

「お金のことなら気にするな。俺から誘ったんだから。
それに今日は、いつもより多めにバイト代が入ったんだ。だから俺に払わせてくれ」

バイト代が入ったのは本当だ。今日は給料日だから。
でも、多めに入ったというのは嘘であろう。きっと私に遠慮させないためである。
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