私が一番近かったのに…
「挿れてもいいよ。今日はもう大丈夫だから…」

「それは絶対にダメだ。もう少し自分の身体を大事にしろ」

優しく髪を掬い、毛先が手から落ちるまで触れてくれた。
愛おしそうに触れるその手つきに、この手が触れてると思うだけで、心も身体もどんどん熱くなっていった。

「片方だけが気持ちよくてもダメだ」

髪に触れていた手が頭へと移動し、優しく頭を撫でられた。
そして、そのまま顔が近づいてきて、おでこにキスをされた。

「俺はこういう甘い時間も味わいたい派なんだ。
だから、こういう時間も大切にしたいって思ってる」

愁の言葉にドキドキした。そう思ってくれていることが嬉しかった。

「私もこういう時間を大切にしたいって思ってるよ。
でもごめんなさい。もう我慢できない。愁がしてくれないなら、私がやる」

頭を撫でていた手を掴み、今度は私の方が愁を押し倒した。
愁は驚いた顔をしていた。隙を見て、ズボンのベルトを外し、チャックを下ろした。

「おい、幸奈!…っ!何してんだよ?」

聞こえないふりをして、パンツも下ろした。

「愁がしてくれないなら、私がするって言ったでしょ?見てて。私の本気を…」

愁の言葉を遮り、私はやりたいようにやらせてもらった。
こんなにも自分に大胆な一面があったなんて、知らなかった。

「へー。分かった。お前の本気、受け止めてやるよ」

その場の勢いに任せてしまったため、その先のことはまだ何も考えていなかった。
今更、どうすればいいのかと慌てふためく。

「いいの?そういう態度でも?後で吠え面かかせてあげるからね」

知識をフル活用し、私は精一杯、攻めるのを頑張った。
そして、頑張りすぎたせいか、気がついたら眠りに落ちていた。
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