私が一番近かったのに…


           ◇


目を覚ますと、知らない天井が見えた。
あれ?昨日はバイト終わりに、愁が迎えに来てくれて。そのまま一緒に帰って…。

「幸奈、おはよう」

愁の声が隣から聞こえてきた。ということは、もしかして昨夜は愁と……。
身体を起き上がらせようとするが、身体が重くて、思うように動けない。
ですよね。やってますよね。だってココは…。

「おはよう。えっとその、ここって……」

「え?もしかして覚えてないの?昨日の夜、ラブホに来たじゃん」

覚えているに決まってる。覚えていないわけがない。
だからこそ、ちゃんと確認しておきたかった。これが夢じゃないかどうかを…。

「ちゃんと覚えてるよ。でも、一応確認しておきたかったの。
なんだかまだ信じられなくて。私がラブホに来てることが」

ずっと地味で。無難に生きてきて。そんな私がまさか男の人とこんな所へ来るなんて、思いもしなかった。

「その気持ちすげー分かるよ。
でも、こうして幸奈と一緒に来れていることが嬉しすぎて、なんだか実感が上手く湧かない…」

自分達の関係がここまで進展するなんて、想像すらしていなかった。
愁も私も望んでいた形とは違う関係になってしまったが…。

「私も。嬉しすぎてあまり実感が湧かないよ」
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