私が一番近かったのに…
終わった後の甘い時間が一番好きだ。それ以上のことは望まない。
それでも、この時間がいつまでも続いてほしいと願ってしまうのであった。

「ねぇ、今度、家でお泊まり会しない?」

「お泊まり会…?」

しまった…。既にお泊まり会みたいなことをしているも同然であった。
まぁ、ただのお泊まり会ではなく、やることはやってますが…。

「ごめん、今のはナシ。聞かなかったことにしてください」

恥ずかしい。穴があったら入りたいくらいだ。
ただ、こうして同じ空間にいることが嬉しいと思い、咄嗟に何も考えずに、思ったことを口走ってしまった。

「やろっか。お泊まり会。それはエッチなしですか?」

まさか、愁が話に乗ってくれるとは思ってもみなかった。愁の優しさに、胸が染みた。

「えっと、どうしよう?たまにはナシってことにしてみる?」

「じゃ、夜はやらないで、朝やるってのは?」

「それはそれでアリかも」

今まで朝する時は大抵、夜の余韻から欲してすることが多かった。
敢えて夜はせずに、朝からするっていう新たな趣向も悪くないと思った。

「だろ?幸奈ならそう言ってくれると信じてた」

笑顔でそう告げられた。信じてもらえたことが嬉しくて、思わず涙が溢れ出そうになった。

「お泊まり会も悪くない提案なんだが、やっぱりまたホテルも悪くないな。
そうだ!今度、一緒に旅行に行かないか?」

「旅行に?」

「そう。旅行に。温泉に行きたいのと、旅館でエッチしてみたくて。ダメか?」

旅行…か。そういえば、まだ愁と旅行に行ったことがない。
旅館ってことは、浴衣姿の愁が見られるってことだよね?見てみたいかも。愁の浴衣姿を…。

「うん。いいよ。私も温泉に行きたい」

「そうと決まれば今度、計画を立てて、どこへ行こうかちゃんと決めようぜ」

愁と一緒に出かけられる。たったそれだけのことで、私の心は満たされた。
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