私が一番近かったのに…
「うん。そうしよっか」

愁と旅行なんて、想像ばかりがたくさん膨らんでいく。
温泉といえば、箱根や鎌倉、熱海辺りなんかも悪くない。

「早く幸奈と旅行へ行きたいな…」

こんな時、ふと頭に思い浮かぶ。私達はあくまでセフレだ。それ以上でもそれ以下でもない。
セフレになった今でも、愁の中で私の存在は、大切な友達であることに変わりない。
実際、大事にされてると思う。たまに友達の域を超えていると感じる時もある。
それはきっと愁が少し過保護すぎるせいであろう。
そんなところも大好きだ。セフレの私に対して、こんなにも大事にしてくれるのだから。
きっと彼女のことは、もっと大事にしているのであろう。いいなぁ。幸せそうで羨ましい。
結局、どんなに大事にされても、私は一番にはなれないのであった。

「私も。早く愁と旅行に行きたいな」

一緒に旅行に行ってもいいのだろうか。彼女に対して罪悪感を感じてしまう。
これが二人っきりとかはでなく、バイト仲間の何人かで行くのであれば、少しはそんな気持ちも和らいだかもしれない。

「幸奈はどこに行きたい?」

真剣な目でそう聞かれた。罪悪感で苛まれている頭では、上手く頭が働かない。

「私は景色が綺麗で、美味しいものが食べられるところがいいな」

ありきたりなことしか言えなかった。
でも嘘はついていない。愁とならどこでもいいと言ってしまえば奇弁だが、傍に居られればどんなところでも幸せだ。

「それもいいよな。景色も食べ物も大事だからな」

いいなと思うものや好みが似ている。気づかないうちに、似てきたのかもしれない。一緒に居る時間がそうさせたのであろう。

「うん。愁ならそう言ってくれるって信じてたよ。私も真似してみた。なんてね」
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