私が一番近かったのに…
冬休みを楽しみにしている愁に対して、時が止まったままの私には、冬が訪れることを怖く感じた。
なんだか気づかないうちに、どんどん気持ちが離れていってしまっていることを、改めて痛感させられた。

「そうだね。早く旅行に行きたいからね」

旅行に行くのは楽しみだが、冬休みということは、彼女と過ごす時間も同時に増えるというわけで。そんなの私には耐えられない。
でも、耐える以外に選択肢なんて、私にはない。
一体、私はいつまでこんなことを続けるのだろうか。
いつかこの沼から抜け出せる時がくるのだろうか。

「今から旅行資金を貯めないとな。なるべく豪勢にやりたいからな」

私との旅行を楽しみにしてくれているのは、とても嬉しい。
それと同時に、愁自身は彼女に対して罪悪感は感じないのだろうかとも思ってしまう。
あんなに楽しそうに話しているのに。喧嘩も些細なことが多いのに。
どうして、彼女に対して不誠実な行動をし続けることができるのか、私には理解できなかった。

「ねぇ、愁。冬休みって夏休みより日数少ないよね?」

「あぁ。それがどうしたんだ?」

確かクリスマス前後ぐらいから、冬休みに入るはず。
バイト先では、彼女とお付き合いしていることは公認の仲のため、クリスマスはなんとかなるであろう。
でも、問題は旅行の方だ。私と愁が休みを合わせることは難しいと思う。
愁はちゃんと考えているのか不安だ。ここは確認も兼ねて、聞いてみることにした。

「私達、バイトしてるじゃない?ってことは、冬休みって稼ぎ時で、忙しいと思うの。
でも愁はクリスマス、当然休むでしょ?だとしたら、それ以外にも休みをもらうのって、なかなか厳しいんじゃないのかなと思って」

随分、遠回しな聞き方をした。彼女と過ごすかどうか確認するためならば、直球で聞けばいいのに。
どうして、こんな遠回しな聞き方をしたんだろう。自分の不器用さに落ち込んだ。

「言われてみればそうだな。幸奈、よく気づいたな」

気づくよ。だって私は愁が好きだから。

「当たり前でしょ。寧ろ気づかないなんておかしいよ。彼女がいるくせに」

「うっせー。誰のせいだと思って……」

どうして、こんなタイミングで、そんなことを言うの?
やめて。期待しちゃうから。そんなこと、言わないでよ。
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