私が一番近かったのに…
「私のせいなの?」

恐る恐る聞いてみた。どんな言葉が返ってくるのか分からないので、答えを聞くのが怖い。
勘違いかもしれない。それでも聞かずにはいられなかった。

「忘れてたわけじゃねーよ。ただ、幸奈との旅行の計画を立てようとして、忘れそうになってただけだ」

分かっていたことだ。私は何を勘違いしそうになっていたのだろうか。彼女と過ごすクリスマスを忘れるはずがないのに…。
期待していたわけじゃない。期待したくなくても、あんな言葉を聞いてしまえば、勝手に気持ちが暴走してしまう。
抑えきれなかった。そしたら聞かずにはいられなかった。自業自得だ。やってしまった…と後悔した。

「だよね。よかった。心配したんだよ。もう忘れないでね」

余計なお世話と思われたかもしれない。
それでも言わずにはいられなかった。

「あぁ、もちろんだ。もう忘れねーよ。忘れてたまるもんか」

どうやら気合いを入れさせてしまったようだ。逆効果だった。
私のしていることはいつも空回り。一生愁に気持ちが届かないような気がした。

「うん。そうだね。頑張れ」

今の私の精一杯の一言だった。
これ以上のことは気持ちが邪魔して言えなかった。

「そうだな。クリスマスも旅行も、休みを取るの頑張るよ」

再び手が頭に触れてきた。その手はずっと優しくて。いつまでも触れてほしいと思った。

「無理なく程々にね」

「幸奈もな。お前も頑張って休み取れよ。怪しまれないように…な?」

そんなの分かってる。怪しまれてしまえば元も子もないから。

「そうだね。頑張る」
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