私が一番近かったのに…
ここでいつもの私なら話が終わる。
しかし、この日の私は、いつもより様子がおかしかった。

「にしても、なんだかんだ彼女と続いてるね。付き合ってもう何ヶ月くらい?」

やっぱり今日の私は変だ。こんなことを聞いてどうするつもりなのだろうか。
自分で自分の首を絞めるようなことをしてまで、知りたいことなの?
クリスマスのことといい、愁の気持ちを確かめるようなことしかできずにいた。

「うーん、何ヶ月目だろう?まだ三、四ヶ月ぐらいかな」

「へぇー。喧嘩もするみたいだけど、別れずに続いてるね」

本当は別れてほしいという意味を含めて言ってみた。
友達の恋を素直に応援できないなんて最低で。友達として失格だ。

「まぁーな。お前とこんな関係になる前にも告げたけど、俺は絶対に彼女と別れるつもりはないから」

忘れていたわけじゃない。あの時、はっきりとそう告げられた。

『俺はお前の彼氏にはなれない。
これ以上、俺に期待しないでくれ』

関係を持つ前にそう宣言された。最初は言葉の意味を理解したくないあまり、脳が勝手に拒絶していた。これが私なりの小さな抵抗だった。
その後もずっと愁の言葉が頭の中で何度も繰り返し再生され、なかなか消えてはくれなかった。
やっと現実を受け止められるようになったが、それなりに時間がかかった。
そして今、また同じ言葉を言われ、再び私は同じ状況を味わっている。
二回目だからなのか、妙に冷静でいられた。
絶対…にか。希望なんてないに等しい。それでもまだ諦めきれずにいた。

「分かってるよ。だって愁は彼女のことが大好きだもんね」

「大好きだな。色々思うところはあるが、やっぱり可愛いし大好きだ」

私は一生、あの子には勝てない。一度味わった敗北を、一生背負い続けなくてはならない。
友達としてしか、傍にいることを許されていないのが悔しい。
私にも、もう一度だけチャンスがほしい。

「羨ましいですな。惚気話、ごちそうさまです」
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