私が一番近かったのに…

4章:二人だけの夜…

秋があっという間に過ぎ去り、気づけば既にもう冬が訪れていた…。
約束していた旅行が、とうとう近づいてきている。

あれから愁は、旅行の休みを捥ぎ取るために、ほぼ休むことなく働いていた。
前々から滅多なことがないと休むことはなかったが、前以上に休まなくなった。

休みがない中、合間を縫って、彼女とは会っていたようだ。バイト終わりの帰り道、そう惚気けていた。
そして愁の凄いところは、彼女と会うだけではなく、私ともちゃんと時間を作ってくれた。
彼女との約束がない日には、必ず家へと立ち寄り、旅行のガイドを持ってきては、二人でどこへ行くか話し合った。
そんなこんなが数回続き、ある日突然、愁から電話がかかってきたかと思いきや、

『今から旅行会社に、予約しに行くぞ』

…と一言だけ告げて、一方的に途中で通話を切られてしまった。
私はとりあえず、慌てて支度を済ませて、家を飛び出した。

「行くぞ」

玄関を開けたら、外に愁が立っていた。そういえば、待ち合わせ場所を決めていなかったことを思い出した。
それもこれも電話を途中で切った愁のせいだが。
愁はいつも思いつきな行動が多い。そんな愁に振り回されてばかりいる私の身にもなってほしいものだ。

「どこに行くの?」

「決まってるだろう。ツアー会社だよ。バスやホテルを予約しないといけないからな。
だって俺達、車持ってないからさ」

私はそういう意味で聞いたわけじゃない。
でももうこの際、そんなことはどうでもよかった。
愁の自由人なところに、もう慣れてしまったから。

「確かにそうだね。そもそも私は運転免許すら持ってないんだけどね」

「そうなんだ。俺もバイクの免許しか持ってないや。
そうだ!今度、一緒に合宿で免許を取りに行こうぜ」

教習所が行なう夏の合宿がある。大体の大学生は夏休みを狙い、合宿で取得してしまう人が多い。
私も来年には…と思い、コツコツ貯金を貯めていたので、一緒に取りに行く案に賛成だ。

「そうだね。一緒に取りに行こっか」

こんな機会、滅多にないかもしれない。一緒に居られる口実が増えるのなら、なんだって構わない。
それがたとえ運転免許証を取得することであったとしても。
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