私が一番近かったのに…
京都へ行くのは、中学の修学旅行以来である。
あの落ち着いた雰囲気の街並みが、私は好きだ。
穏やかな場所で、誰にも邪魔されずに、愁とのんびり過ごすことができる。
精神的に疲れていたので、落ち着ける場所に行けるのは本当に有難い。

「うん、いいと思う。京都に行くの楽しみ」

京都にはたくさんの神社やお寺があるので、パワースポット巡りをしてみるのも、悪くないかもしれない。
あと、京都ならではの、美味しい食べものなんかも食べてみたい。

「よかった。それじゃ、京都に行くの決定だな」

行先が決まった。あとは無事に予約が取れるかどうかのみ…。
そんなことよりも、愁の予測不能な行動に、ちゃんと自分が付いていけるかどうか、不安でしょうがない。
きっと旅先でも、愁は突拍子もない行動をするであろう。
今からたくさん振り回されることを考えると、頭が痛くなりそうだ。
行く前から色々考えても仕方がないので、その時になったら上手く対応しようと思う。
とにかく今は、楽しいことだけを考えることにした。

「もしかして、俺が色々勝手に決めたことに、怒ってるのか?」

私が黙りこんでいたら、怒っていると勘違いされた。
怒るわけがない。寧ろ逆である。今から旅行がとても楽しみだ。
だからこそ、事前に色々と調べてくれたことに感謝している。
ただ、それと同時に不安なことも少しある。どう乗り切ろうかと、頭を悩ませている。

「ううん、ごめん。少しぼーっとしちゃって」

上手い言い訳が思いつかず、見え透いた嘘をついてしまった。
勘が鋭い愁は、嘘だと見抜いているかもしれない。
それでも愁は優しいから、敢えて気づかないフリをしてくれる。

「大丈夫か?しっかりしてくれよ」

愁に迷惑をかけられない。
旅行の下調べなどは任せてしまったが、これから先はしっかりしないと。

「心配かけてごめんね。今からちゃんとするね」

「気にするな。俺は幸奈との旅行が、凄く楽しみだから」

私の方がもっと楽しみにしているに決まってる。
だって、朝から晩までずっと好きな人と一緒に居られるんだから。こんな幸せ、他にない。
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