天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

　しばらく経つと店のドアベルが鳴って、嵐さんがひとりでテーブルに戻ってきた。

「驚かせて悪かった。それに、ノアが色々ひどいことを言ってすまない」
「いえ。私は大丈夫ですが……ノアさん、かなり怒ってましたよね。彼女との仲を疑うわけではないのですが、普通の友達にしては嵐さんに執着していたような……」
「……友達。確かに彼女との関係を表すには、少し軽すぎる言葉かもな」

　ということは、友達以上の関係だった……？

　昔の彼は家族を作らないというポリシーを持っていたし、ノアさんにも結婚しないと宣言していたようだけれど、恋人を作らなかったというわけではない？

　ふたりの関係を邪推し始めると止まらなくて、胸がざわざわと不穏な音を立てる。

　過去は過去。自分の恋愛経験ならそう割り切れるのに……相手のことは許せないなんて、勝手だよね……。

「誤解させるような言い方をしてごめん。友達以上といっても、決して彼女と深い関係だったわけではないよ」
「えっ……？」

　私の不安を察したように、嵐さんが慌てて否定する。

　しかし、深い関係ではないのに友達以上ってどういう意味なんだろう。