天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「実は、ノアの両親もあの事故で亡くなっているんだ」
彼らの意外な繋がりに、思わず目を見張る。
「パシフィックスカイ航空の……?」
「ああ。そのことでノアとはよく話すようになって、フライトスクールの中でも、他の生徒とは違う仲間意識みたいなものがあった。家族を失った悲しみは訓練にぶつけて、お互い立派なパイロットになろうって。いつもそう励まし合ってた」
……ノアさんも、嵐さんと同じ心の傷を負っているんだ。
それでもふたりとも折れることなく、パイロットになる夢を叶えた。
彼らの間にあるのは、もしかしたら恋愛感情よりも強い絆かもしれない。
「だから……当時『家族を作らない』と言っていた嵐さんに結婚報告をされて、ノアさんは裏切られたように感じたんですね」
ふたりとも望んで似た境遇になったわけではない。そんなことはわかっているけれど、私には知り得ない心の深い部分でつながっていると思うと、複雑な気持ちになる。
くだらない嫉妬。自覚があるのに止められない。
「おそらくな。しかし、紗弓に再会してから俺は初めてその考えを変えたいと思った。ノアにもさっきそう説明したよ。簡単に納得はできないようだが」
「そうですか……」