天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
ノアさんがもし本当に嵐さんを恋愛的な意味で好きだったとしたら、できるだけそばにいてほしくない。
だけど、彼らはコックピットでふたりきりになる。地上のオフィスで、同じパソコンを覗き込む。そして私の入っていけない、パイロット同士の会話をする。
……想像しただけで、嫌だ、と思う。嵐さんの大切な仕事に対してそんなことを思うなんて、幼稚すぎるのに。
彼に気づかれないようため息をついて、シチューを口に運ぶ。
美味しそうだと思ったはずのそれはほとんど味のない液体に感じられ、ただ機械的に、胃の中へと流し込まれていった。
私は楽しみにしていた映画の間もどこか上の空で、気がついた時にはスクリーンにエンドロールが流れていた。
嵐さんは夕食もどこかで食べようかと誘ってくれたけれどそんな気分にはなれなくて、『疲れたので帰りましょう』となんて、彼ががっかりするような返答をしてしまった。
気を遣ってくれた嵐さんはマンションまでタクシーを使い、無理に会話を振ることもなく、私をそっとしておいてくれた。
それでもシートの上では手を握り合い、絡めた指を時折愛おしそうに撫でられる。