天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
行為は初めてというわけではないけれど、好きな相手との初めての夜は、いつだって緊張する。
恥ずかしいというだけじゃなく、お互いにとって特別なひとときにしたいから。
「もちろん、紗弓が嫌じゃなければの話だ」
「私は……」
自分の気持ちをたしかめるように、手のひらが自然と胸の上に移動する。その手は激しい胸の高鳴りに合わせて震えた。
まだ、本物の夫婦だと胸を張って言えない状態なのにいいのだろうか。
でも、結婚前の恋人同士だって、愛を確かめ合うためにする行為なわけで……嵐さんをもっと知るために、そして、私をもっと知ってもらう方法としては悪くないのではないだろうか。
うまくいけば、一気に距離が縮まる可能性もある。
それに……私の心には、もっとシンプルな感情がある。
――嵐さんが欲しい。今よりもっと近くで、彼を感じたい。
覚悟が決まるとすうっと息を吸い、挑むように彼を見つめた。
「嵐さんが望むなら……どうぞ、お召し上がりください」
恥ずかしすぎて、また変なオブラートに包んでしまった自覚はある。
だけど、直接的に誘うなんて私には無理だもの。言い切った後は真っ赤な顔を隠すようにして、深々と頭を下げた。