天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 話を聞いてあげたかったけれど自分の仕事もあるし、彼のネガティブな感情に自分まで影響されてしまうのが怖くて、自然と会う頻度や連絡が減った。

 そうしてなにもできないでいたら、昇さんは乗務前のアルコールチェックに引っかかり、乗務停止になってしまった。

 私はパイロットの父を持つだけでなく、自分も空港ラウンジで働いている身。

 お客さんに安全で快適な旅を提供したい気持ちはクルーと一緒なので、その行動だけはどうしても許せなかった。

『お酒はもうやめましょう』と説得したのだが、昇さんはそれを口うるさく感じたらしい。

 ある日、飲みに行ったバーで偶然会った女性と浮気したと、私に直接報告してきた。理由は、『紗弓が俺の味方をしないから』だそうだ。

 味方になることばかりが愛じゃない。私は昇さんのためを思って……。

 言い返したい気持ちもあったが、なんだかもう疲れてしまって、私から別れを切り出した。

 昇さんも同意してくれたが、直後にブルーバードエアラインを退職したため、今どこでなにをしているのかは知らない。

< 11 / 229 >

この作品をシェア

pagetop