天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
傷だらけの羽を持つ二人
二月に入ってすぐの日曜日。中番の仕事終わりだった私と夏希を、嵐さんが友達とのご飯に誘ってくれた。
実は、夏希が出会いを求めていることを嵐さんに相談したら、紹介できそうな人物にひとり心当たりがあると言ってセッティングしてくれたのだ。
気取らないビストロの店内で、男女四人が向き合う様はまるで合コンのよう。加えて夏希がかなり緊張しているので、私までなんだかドキドキしてしまう。
メンバーが揃ったところでまず嵐さんが夏希に自己紹介し、それから隣の男性の番へと移った。
彼は男性ながら〝美人〟と形容したくなる中性的で整った顔立ち。緩くうねるダークブラウンの髪はサイドや前髪が少し長めで、表情が見えづらい。
「広瀬琥珀です」
そう言ったきり黙ってしまうので、私と夏希は顔を見合わせる。
苦笑した嵐さんが、広瀬さんの肩を叩いた。
「もうちょっと、なにかあるだろ。せめて職業とか」
「……航空管制官、してます」
チラッと私たちを見てそう言った後、また目を伏せてしまう広瀬さん。
それから気まずそうにお冷のグラスに手を伸ばし、口をつける。