天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「じゃ、じゃあ次は私たちの番ですね。私は露木紗弓です、そしてこちらは……」
「矢坂夏希です。紗弓と同じ、青い鳥ラウンジ勤務です」
居ずまいを正し、にこやかに微笑む夏希。
キラキラとしたオーラが見えるほど気合いが入っているが、広瀬さんはチラッと一瞥しただけですぐに視線をテーブルに戻してしまう。
嵐さんが場を取りなすように咳払いをして、私たちに笑いかけた。
「広瀬がこうなのは、最初だけだから気にしなくていい。そのうちうるさいぐらい喋り出すから」
「そ、そうなんですね……」
半信半疑だが、夏希と目を見合わせて頷く。やがて注文したワインが運ばれてきて、私たちは乾杯した。
それから三十分も絶たないうちに、嵐さんの言葉が事実であったことを実感することになった。
人見知りゆえの景気づけなのか、それとも単にお酒が好きなだけか。次々ワインを空けていく広瀬さんは、酒量に比例するように饒舌になったのである。