天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「日本ではどの空港にある滑走路が一番長いか知ってますか?」
「いいえ。紗弓、知ってる?」
「確か……成田と関空だったような」
夏希と一緒になって、びくびくしながら広瀬さんを見る。
なぜか先ほどから空港に関するクイズ大会が開催されているのだが、不正解だった場合広瀬さんがとても不機嫌になるので、私たちは間違えを口にしないよう必死だった。
時折嵐さんが助けてくれようとするのだが、「露木は黙ってろ」とぴしゃりと言われてしまう。
「紗弓さん、正解です。正確に言えば、成田のA滑走路と関空のB滑走路。どちらも四千メートルあります」
微かに口角を上げてそう言った広瀬さんを見て、安堵した。
父の影響で、我が家には航空雑誌や旅客機の写真集、空港のガイド本などが溢れている。それらに小さな頃からなにげなく触れているので、多少の知識はあった。
長距離国際線などは重量が重くなる分、飛び立つために長い滑走路が必要になる。逆に小型機なら短い滑走でも加速できるため、小さな島の空港などは滑走路が短いのだ。
「それに比べて矢坂さん」
広瀬さんが穏やかな顔をしたのは一瞬で、すぐにまた咎めるような視線を夏希に向ける。
夏希はビクッと肩を竦めた。