天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「ラウンジ業務に直接関係ないとはいえ、空港勤めのくせに無知ですね」

 やれやれ、と言いたげにため息をつき、ワインに口をつける広瀬さん。

 確かに、先ほどから正解するのは私ばかりだ。けれどそれはたまたま私の父がパイロットだからで、私だって夏希と同じ立場ならそこまで知識はなかっただろう。

「広瀬、また悪い癖が出てる」

 嵐さんが窘めるように言って、広瀬さんの肩に手を置く。広瀬さんはハッと我に返ったように目を見開いた。

 悪い癖って、どういう意味……?

「仕方ないだろ、こんなに好みの女性が目の前に現れたのは初めてなんだ」
「言い訳をするな。いい加減こんな自分を変えたいからと、俺に女性を紹介しろと頼んできたのはお前の方だろ」
「そ、それは……」

 広瀬さんは血色の良い唇を噛み、子どもが親の機嫌を窺うようにな上目遣いで夏希を見る。

 それから小さくため息をつくと、首をがくんとうなだれた。

「ひどいことを言ってすみません。好みの女性を前にすると、逆の態度を取ってしまう……それが、僕の悪い癖です」

 好みの女性……? それってもしかして。

 隣を見ると、夏希は驚いた様子で口元に手をあてていた。

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