天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「だから、今まで当たり前のように女性には嫌われてきました。交際経験もありません。こんな僕が、誰かに女性を紹介してもらったからって急にうまくできるはずないですよね。せっかくまっとうな男との出会いを求めて来てくださったのに、すみません」
にぎやかな店内で、私たちのテーブルだけが、しんと静まり返る。頭を下げたままの広瀬さんは、額がテーブルにくっついてしまいそうだ。
なにか言葉をかけたいが、夏希がひどいことを言われたのもあって、フォローの言葉が簡単には浮かばない。
嵐さんの友達だから悪い人ではないのだろうけど。
「変わるつもりは……あるってことですよね?」
夏希が静かに問いかけた。迷子のように不安げな目をした広瀬さんが、顔を上げて彼女と視線を合わせる。
「さっき広瀬さんに『無知』って言われて、ショックだったけど本当のことだからそれほど傷ついてはいません。もちろん、そういう辛辣な物言いが毎日だったら落ち込みそうだけど」
夏希らしい、さっぱりとした考え方だ。
険悪だった空気が、夏希を中心に軽やかなものに変わっていく。