天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
嵐さんも彼の切実さが伝わったらしい。少し考えるそぶりをしてから、まっすぐに広瀬さんを見つめた。
「なあ広瀬、完璧な答えなんて、どこにもない。俺だって、紗弓との結婚生活の中で、言葉の選択や態度を間違えてしまうことがある。だけど、その間違いばかり気にして相手との対話をあきらめてしまったらダメだ。後悔したら心から謝って、傷つけてしまったら、どうやってその傷をふさいでやれるか必死で考える。その繰り返しが、信頼を築いていくんじゃないか?」
嵐さんの言葉を聞きながら、私はどうして彼を好きなのか今さらのようにわかった気がした。
この間、ノアさんのことで不安になる私にすぐ気づいてくれたように、嵐さんはどんな時も私の心を理解しようと心を砕いてくれる。そして彼自身の心の変化も、ありのまま正直に伝えてくれる。
ご両親の悲しい事故と向き合い、大きな壁を乗り越えるようにしてパイロットになったのと同じように。
〝家族は作らない〟という心の呪縛を解き放つため、私との関係を一生懸命前に進めようとしてくれる真摯な姿が、いつだってこの胸を熱くさせるのだ。