天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「対話……そうだよな。僕に最も足りないことかもしれない」

 ぐっと唇を巻き込み、嵐さんの言葉を噛みしめる広瀬さん。

 次に彼が顔を上げた時には、その瞳に夏希をしっかり映していた。

「矢坂夏希さん」
「はい」

 夏希はいくぶん緊張気味に、背筋を伸ばした。

「たぶん、僕は露木よりももっと色んなことを間違えてしまうと思います。だけど、あなたをあきらめたくありません。悪いところは必ず直す努力をしますから、お付き合いしていただけますか?」

 人の告白に立ち会うのって、ドキドキする……。

 夏希の答えがなんとなくわかっていても、広瀬さんの想いが実りますようにと、心の中で祈った。

「もちろん。喜んで」

 やがて、夏希がそうハッキリと口にすると、広瀬さんの瞳が微かに潤む。

 それから溢れ出す感情がこらえきれなくなったように、ガシッと嵐さんの肩を掴んで揺らす。

「や、やった……露木、やったぞ……!」
「だから、俺じゃなくて矢坂さんと向き合えって言ってるだろう」

 困ったように笑いつつ、嵐さんもうれしそう。

 その光景をクスクス笑う夏希の頬はほんのり赤くて、私も心の中で〝よかったね〟と呟いた。

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