天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
食事会は十時ごろにお開きになった。広瀬さんが夏希を送っていくことになり、店の前でふたりと別れる。
付き合いたてのカップルらしくぎこちない距離で歩くふたりを見送っていたら、不意に夏希から広瀬さんの手を握った。
広瀬さんは派手にびっくりして繋いだ手を三度見くらいしていたが、やがてその手をコートのポケットに入れる。
自然と目を合わせたふたりは甘い視線を交わし、ますます身を寄せ合って夜の街へ消えていった。
「あのふたり、うまくいきそうですね」
「……ああ。広瀬の頑張りには、こっちまで勇気をもらえたな」
話しながら、タクシーの拾える場所までふたりで歩く。
広瀬さんと夏希が結ばれた後で乾杯をし直し、私もワインをたくさん飲んでしまったので、少し足もとがふわふわする。
「紗弓、結構酔ってるだろ。危ないから掴まって」
嵐さんが、軽く曲げた腕を私の方へ差し出す。彼は本当に、私の些細な変化にすぐ気づいて助けてくれる。
酔って難しいことが考えられなくなっている頭の中でも、単純に、彼のそういうところ好きだなと思った。