天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「ありがとうございます」

 そっと腕を掴ませてもらい、大きな体に身を寄せる。

 冬の寒さなんて一気に忘れてしまうくらい、心も体もぽかぽかと温まる。

「そういえば、次の土曜は両親の墓参りに行こうと思うんだが、付き合ってくれるか? 月命日に紗弓と一緒に休めるのが初めてだから、両親にきみを紹介する意味でも」

 そういえば、次の土曜日は嵐さんと休みが重なっている貴重な一日。

 生理がかぶるからと〝私たちのバレンタイン〟には提案しなかったけれど、ちょうどよかったのかもしれない。

 月命日という大事な日に、ご両親に私を紹介してもらえる……。もしかしたら、広瀬さんと夏希を見ていて、嵐さんの中でまた心境の変化があったのかもしれない。

 彼との夫婦関係が一歩前進した証拠のようでうれしくなる。

「もちろんです。ぜひご挨拶させてください」
「ありがとう。海が見える場所がいいからと、鎌倉に建ててもらったんだ。少し遠いから、ドライブがてらのんびり行こう」
「はい」

 笑顔で返事をすると、嵐さんが不意に身を屈めて顔を近づけてくる。

 彼の冷たい鼻先が頬をかすめた直後、唇に優しいキスが触れた。心の内側から、愛おしさがあふれてくる。

< 122 / 229 >

この作品をシェア

pagetop