天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

 予約してくれているのは露木さんなので、入り口のスタッフに彼の名を告げる。

 通された個室には立派な鳳凰(ほうおう)の絵画が飾ってあり、四角い渦巻き模様が施された椅子や格子窓、真っ赤な雲柄の絨毯が異国情緒たっぷりだ。

 コートをハンガーにかけてもらい、席につく。なにげなくインテリアを眺めていると、テーブルに置いたスマホが短く震えた。

 また昇さんからのメッセージだ。

【後悔先に立たずって言葉、今実感してる。そんなことを考えたって、失った日々は戻らないのにな】

 失った日々……パイロットを辞めたことを悔やんでいるのだろうか。

 だったら今からでもやり直しはきく。過去のアルコール検査の結果は消せないけれど、過ちを認めてやり直す気さえあれば、どこか別の航空会社できっとまた……。

 返信しようと指を動かしていたところで、個室のドアがノックされる。

「お連れ様がご到着されました」というスタッフの声の後、露木さんと思しき男性がやってきた。

 慌ててスマホを置き、椅子から腰を上げる。

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