天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「ノアさん、嵐さんのことが好きなんだと思います。……特別な男の人として」
自分が彼の一番の理解者だと自負していたのに、久々に会ったら別の女性が隣にいて、結婚したなんて言う。
裏切られたと思うと同時に、彼への恋心を知ったのではないだろうか。
私の存在が、気づかせてしまったんだ。
「やっぱりそう思うか。……俺も、薄々感じてはいたが」
嵐さんはとくに驚くことなく、静かにそう言った。それから私を見つめ、伸ばした手で頬に触れる。
「たとえそうだとしても、不安にならなくていい。紗弓以外に俺の心が動くことはないと断言できる。だから顔を上げて俺の目を見るんだ」
頬から顎にゆっくり移動した彼の指先が、ゆっくり私の顔を引き上げる。ノアさんの宣戦布告で頼りなく揺れていた瞳に、嵐さんの力強い眼差しが刺さる。
見つめているだけで、なぜか泣きたくなる。切ないくらいに、彼が好きだ。
「ノアには悪いが、花を取り換えよう。夫婦で選んだ花と、俺に好意を持っているかもしれない女性の選んだ花を両方供えるのは、いくらなんでも趣味が悪い。花に罪はないし少しもったいないが、両親もわかってくれる」