天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
不安も、ノアさんへの嫉妬心もすべて汲んだ上で優しく包み込んでくれる彼に、ささくれ立った心が凪いでいく。
それからふたりで墓前に移動し、掃除を始めた。結局、花は私の意思でノアさんのものも残し、夫婦で選んだ花と一緒に供えることにした。
彼女が嵐さんに抱く想いと、ご両親を供養したいと思う気持ちは、切り離して考えるべきだと思ったから。
それに私は、嵐さんが『花を取り換えよう』と言ってくれた、その気持ちだけで十分だったから。
香炉に線香を置き、そこから立ちのぼる煙の厳かな香りに包まれながら、私と嵐さんは順に合掌した。
私たちはまだ未熟な夫婦ですが、お互いを尊重し合うことだけは忘れずに ともに歩いていきます。
どうか温かく見守っていてください――。
閉じていた目を開けると、隣に立つ嵐さんから視線を感じた。見上げた先の彼は、どうしてか切なげな目をしている。
「嵐さん?」
問いかける私から、嵐さんはほんの一瞬、目を逸らした。
気のせいかと思うくらいの間だったけれど、私の胸に微かな違和感が走る。いつでもまっすぐ私と向き合ってくれる彼なのに、らしくない行動だ。