天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす

「そうだったのか。こっちこそ急かしてごめん。ゆっくり返信して」
「……やっぱり家に帰ってからにします」
「いいのか？」
「はい。急ぎの内容ではないので」

　何事もなかったかのように微笑みかけながら、嘘をついた罪悪感にちくちく胸を刺される。

　決して、今のメールを嵐さんに隠すつもりじゃない。でも、彼に相談する前に一度、自分の目で確認したいのだ。昇さんが知っているノアさんの情報について。

　きっとまた、言いがかりのような内容に決まっている。

　それでも、先に見て安心してからじゃないと、落ち着いて話せないかもしれないから……。

　自分を正当化するための言い訳とわかっていながらも、嵐さんに何も伝えないまま、スマホをバッグにしまった。


　帰りの車の中では、疲れたふりをして目を閉じていた。あのＵＲＬの中身が気になって眠れるはずもなかったが、固くまぶたを閉じて、嵐さんが運転する車に揺られる。

　しばらく静かな時間が過ぎ、時計は見ていなくても、感覚的にもうすぐ家に着く頃だろうかと思う。

　そろそろ目を覚ましたふりをしようか、それとも着いたと言われてから目を開けようか。迷っていると、車がゆっくり停まる。

　嵐さんが小さく息を吸うのが聞こえた。