天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
「やっぱり、最初から……」
独り言、だろうか。
どこか沈んだ声が気になり、うっすらと目を開けようとしたその時だ。
「きみと深く関わるべきじゃ、なかったのかもしれない」
え……?
耳を疑うような言葉に、かつてない衝撃を受ける。
どういう意味? 私と関わったことを後悔してるの?
確かに、最初こそ嵐さんは私との距離を悩んでいたけれど、少しずつ、心は近づいているって信じてた。
彼はいつでも優しかったし、私に不安があれば、その原因をつきとめて、解決しようとしてくれた。甘い口づけや抱擁にだって、きちんと心があった。
そうやって少しずつ信頼を積み上げてきたからこそ、今日はご両親のお墓参りに誘ってくれたんじゃなかったの……?
目を開けたら涙が滲んでしまいそうで、狸寝入りをしたまま、唇が震えそうになるのをなんとか堪える。
嵐さんの心が、また遠くに行ってしまったような気がした。
彼はそれ以上何も語らなかったけれど、マンションの駐車場に車を停めた後、眠い目を擦るふりをして涙を拭う私に言った。
「紗弓、悪いけど夕飯はひとりで食べられるか?」
「えっ……?」
どこへ行くんだろう。あんなセリフを聞いた後だから、私を突き離そうとしているのではと不安になる。