天才パイロットは契約妻を溺愛包囲して甘く満たす
――ドクン。
鼓動が一度大きく鳴って、私の中の暗い暗い感情が、今までで一番膨れ上がっていく。
傷だらけの羽。慰め合う。男と女でよかった――。
公序良俗、というものを考慮しているのだろうか。ブログの中では、決して直接的な表現はされていない。
だけどこんな書き方、ふたりがまるで……。
これ以上読みたくない。そんな気持ちに反して、指が勝手に画面をスクロールさせる。
【暗い部屋でふたりきり、命綱につかまかるみたいに抱き合っている時だけ、私は生きてるって感じられる。恋とか愛とか、そんな陳腐な感情じゃない。私たちは、私たちにしかわからない悲しみを共有する同士。こういうのを、ソウルメイトっていうのかな】
命綱……。ふたりの繋がりを私はもう少し、軽く考えていた。
私はまだ、彼と〝羽〟を重ねていない。男と女でよかったと、ノアさんの言うような意味で実感できてはいない。
だけどこのブログの内容が本当なら、ノアさんは本当に、婚姻届一枚の契約で繋がっている私なんかよりも、嵐さんにとってかけがえのない存在なの……?
想像したくないのに、暗い一室で抱き合うふたりのシルエットが脳裏に浮かぶ。
ノアさんの文章がやけに詩的であるせいか、映画のワンシーンのように美しい光景として、勝手に思い描いてしまう。